はじめに:東京ガスの電気、あなたにピッタリ?それとも…?
数年前から、私たちは電気を買う会社を自由に選べるようになりました。それまでは、関東なら東京電力から買うのが当たり前でしたよね。そんな中、「ガスで有名なあの東京ガスが電気も始めた」と聞いて、気になっている方も多いのではないでしょうか。
「大手だから安心だろう」「ガスとセットにしたらお得になりそう」—。確かに、その通りな部分もあります。でも、ちょっと待ってください。実は、東京ガスの電気には、多くの人が見落としがちな、家計に直結する大きな「落とし穴」が隠れているんです。
それは、「電気の材料費が世界で値上がりした時、その分が青天井で電気代に上乗せされる仕組み」になっていること。安心だと思って選んだのに、気づかないうちに世界情勢のあおりを受けて電気代が跳ね上がる…なんてこともあり得るのです。
この記事では、難しい話は一切なしで、東京ガスの電気のすべてを正直にお伝えします。料金プランの仕組みから、実際に使っている人たちのリアルな口コミ、そして「どんな人が東京ガスに向いていて、どんな人はやめたほうがいいのか」まで、プロの視点で分かりやすく解説します。これを読めば、あなたが本当に東京ガスの電気に乗り換えるべきか、きっと答えが見つかりますよ。
東京ガスの電気料金、2つのプランを簡単解説
まず、東京ガスの電気には、主に2つのプランがあります。ほとんどの方が選ぶ「基本プラン」と、環境を大切にしたい方向けの「さすてな電気」です。
① みんなのスタンダード「基本プラン」
これが、ほとんどの家庭が選ぶことになる、一番ベーシックなプランです。電気代は、大きく2つのパーツでできています。
- 基本料金: 電気を使う・使わないにかかわらず、毎月必ずかかる固定費です。家のブレーカーの大きさ(アンペア数)で金額が決まります。
- 電力量料金: 実際に電気を使った分だけかかるお金です。このプランの面白いところは、電気を使えば使うほど、1kWhあたりの単価が3段階で高くなっていく仕組みになっていることです。節約のポイントは、一番高い3段階目の電気をいかに使わないか、ですね。
【基本プランの料金イメージ(30A契約の場合)】
項目 | 金額(税込) | 備考 |
---|---|---|
基本料金 | 935.22円/月 | 毎月固定でかかる料金 |
電力量料金 | 使った分だけかかる料金 | |
~120kWhまで | 29.70円/kWh | 最初のステップ(一番安い) |
120kWh~300kWh | 35.69円/kWh | 真ん中のステップ |
300kWh~ | 39.50円/kWh | 最後のステップ(一番高い) |
【電気が使えるエリア】
基本的に、東京電力が使えるエリアと同じです。東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、静岡県の一部(富士川より東)が対象です。ただし、ガスとのお得なセット割を使いたい場合、ガスのエリアはこれより少し狭いので注意が必要です。
② 地球にやさしい「さすてな電気」
「少し高くても、環境に良いことをしたい」という方向けのプランです。このプランは、CO2(二酸化炭素)の排出が実質ゼロになる、というのが最大のウリです。
ただし、これはあなたの家に届く電気がすべて太陽光や風力でできている、という意味ではありません。実際には普通の電気と同じですが、「環境に良い電気を使っている」という証明書のようなものを東京ガスが買うことで、CO2排出分を帳消し(オフセット)にしている、という仕組みです。
【「基本プラン」との違いは?】
- 料金: 環境に良いことをする分、電気を使った分だけかかる「電力量料金」は「基本プラン」より少し高めに設定されています。
- セット割: 一番大事なポイントですが、このプランはガスとのセット割が使えません。そのため、東京ガスのガスを使っているご家庭だと、トータルの光熱費は「基本プラン」の方が安くなることがほとんどです。
料金プランかんたん比較表
項目 | 基本プラン | さすてな電気 |
---|---|---|
基本料金 (30A) | 935.22円 | 885.72円 |
電力量料金 (~120kWh) | 29.70円/kWh | 30.00円/kWh |
電力量料金 (120~300kWh) | 35.69円/kWh | 36.60円/kWh |
電力量料金 (300kWh~) | 39.50円/kWh | 40.69円/kWh |
ガスとのお得セット割 | 使える!(0.5%割引) | 使えない |
環境へのやさしさ | ふつう | CO2排出が実質ゼロ |

メリット vs デメリット:家計への影響を本音で分析
料金の仕組みがわかったところで、次に「で、結局うちの家計はどうなるの?」という一番大事な話をします。
ここが嬉しい!東京ガスのメリット
東京電力より電気代が安くなる!
今、東京電力の標準的なプランに入っているなら、東京ガスに乗り換えるだけで電気代が安くなる可能性が高いです。特に、電気をたくさん使うご家庭ほど、お得感を実感しやすいでしょう。実際に「電気代が下がった!」「もっと早く替えればよかった」という声は多いです。
ガスと電気の請求書がまとまってスッキリ!
東京ガスの都市ガスを使っているなら、「基本プラン」とセットにすることで、電気代が0.5%割引になります。さらに、バラバラだった請求書が一つにまとまるので、家計の管理がグッと楽になります。
最初の1ヶ月、基本料金がタダになる!
新しく申し込むと、「基本料金1ヶ月無料」のキャンペーンが適用されます。ちょっとしたことですが、嬉しい特典ですよね。
やっぱり「大手だから」という安心感
「何かあっても、東京ガスなら大丈夫だろう」という安心感は、何にも代えがたいメリットです。電気は毎日使うものだからこそ、信頼できる会社を選びたい、という方にはピッタリです。
ここは要注意!知っておくべきデメリットと危険な落とし穴
【最重要】一番の落とし穴:「燃料費調整額」に上限がない
ここが、東京ガスの電気を契約する上で、絶対に知っておかなければいけない一番大事なポイントです。
電気代には、「燃料費調整額」という項目があります。これは、電気を作るための燃料(天然ガスなど)の値段の変動を、私たちの電気代に反映させる仕組みです。
問題は、東京電力の昔ながらのプランには、この燃料費調整額に「ここまでしか上げませんよ」という上限(ストッパー)があるのに対し、東京ガスのプランには、その上限が一切ないことです。
これが何を意味するか、分かりますか?
もし、世界で何か大きな出来事が起きて燃料の値段が急に高騰したら、東京ガスの電気代はストッパーなしでどこまでも上がっていく可能性がある、ということです。実際に、燃料が高くなった時期には「電気代が1.5倍になった」「東京電力より高くなった」という口コミもありました。
つまり、東京ガスに乗り換えるということは、知らず知らずのうちに「世界で燃料の値段が上がった時の損を、私たちが直接かぶることになる契約」を結んでいるのと同じなのです。「安心」というイメージとは全く逆の、大きなリスクがあることを覚えておいてください。
「セット割」は、実はそんなにお得じゃない?
「ガスとのセット割」と聞くと、すごくお得に感じますよね。でも、冷静に見てみましょう。割引率は0.5%。もし月の電気代が1万円だとしても、割引額はたったの50円です。
利用者からも「割引額はたいしたことない」という声が聞かれます。この割引は、家計を劇的に助けるというよりは、「請求書がまとまって便利ですよ」というサービス料に近いもの、と考えた方がいいかもしれません。
その他、細かい注意点
2024年11月から、紙の検針票を発行してもらうのに月220円(税込)の手数料がかかるようになりました 。また、セット割を使うには、ガスと電気の契約者の名前や住所、支払い方法が全部同じでないといけない、といった細かいルールもあります。
他の電力会社と比べてどうなの?
東京ガスは、電力会社の中でどんな立ち位置にいるのでしょうか。ライバルと比べてみましょう。
vs 東京電力:もとの会社よりは安くなる
料金だけを見れば、東京ガスの「基本プラン」は、東京電力の標準プランより安くなるように作られています。基本料金も、電気を使った分だけかかる料金も、東京ガスの方が少しだけ安く設定されているのです。
東京ガス vs. 東京電力 年間料金くらべてみました
家族の人数 | 東京電力 年間料金(目安) | 東京ガス 年間料金(目安) | 年間でこれだけお得!(目安) |
---|---|---|---|
一人暮らし | 81,260円 | 79,856円 | 約1,404円 |
二人暮らし | 134,280円 | 127,680円 | 約6,600円 |
ファミリー | 211,200円 | 199,200円 | 約12,000円 |
【超重要】 この計算には、先ほど説明した「上限のない燃料費調整額」は入っていません。もし燃料の値段が世界的に高騰したら、このお得な金額は一気に吹き飛んで、逆に高くなってしまう可能性があります。
vs 他の新しい電力会社:「一番安い」わけではない
東京ガスは東京電力よりは安いですが、世の中にはもっと安さを追求している新しい電力会社(新電力)がたくさんあります。
調べてみると、シン・エナジーやLooopでんきといった会社は、東京ガスよりもさらに安い料金プランを用意していることがあります 。
ここから見えてくるのは、東京ガスの戦略です。彼らは「一番安い会社」を目指しているわけではありません。「東京電力から乗り換えたいけど、よく知らない会社はちょっと不安…」と感じている人が、「じゃあ、次に選ぶなら一番安心できる東京ガスかな」と思ってもらうことを狙っているのです。
つまり、絶対的な安さを求める人ではなく、「そこそこ安くなって、何より安心できる会社がいい」という方をターゲットにしている、と言えるでしょう。
実際に使っている人の「生の声」を集めました
データだけでは分からない、使い心地はどうなのでしょうか。良い口コミ、悪い口コミ、両方を見ていきましょう。
良い口コミ:「やっぱり安心」「安くなった」
満足している人の声は、やはり「東京電力の時より電気代が安くなった」という喜びの声が一番多いです。次に、「ガスと電気の請求書が一つになって管理が楽になった」という便利さ。そして、「何かあっても大手だから大丈夫」という根強い安心感が、多くの人に選ばれる理由になっています。
悪い口コミ:「え、これが東京ガス?」とガッカリ…
問い合わせ窓口が全然つながらない!
「安心の大手」というイメージを大きく裏切っているのが、問い合わせ窓口の対応の悪さです。「電話が全然つながらない」「何十分も待たされる」「担当者の対応がマニュアル通りで話が進まない」といった不満の声が、驚くほどたくさん見つかりました。困った時に頼りにならないのは、一番ガッカリするポイントですよね。
アプリやサイトが使いにくい…
電気の使用量などを確認できる公式アプリ「myTOKYOGAS」や会員サイトも、「動きが遅い」「すぐにログアウトされて面倒くさい」「どこに何があるか分かりにくい」といった不満の声が多いです。スマホで何でもサッと済ませたい今の時代に、この使いにくさは日々の小さなストレスになってしまいそうです。
結論:あなたは乗り換えるべき?タイプ別に診断します
これまでの話を全部ふまえて、あなたが東京ガスの電気に乗り換えるべきかどうか、タイプ別に診断します!
東京ガスがピッタリなのは、こんな人!
- 「安心」が最優先の人: 今は東京電力だけど、電気代は安くしたい。でも、聞いたこともない会社は不安…。そんなあなたには、大手ならではの安心感と、そこそこの節約が両立できる東京ガスがおすすめです。
- 家計管理をシンプルにしたい人: すでに東京ガスのガスを使っているなら、請求書が一つにまとまるのは大きなメリット。割引額の大きさよりも、毎月の手間を減らしたいあなたにピッタリです。
- 「一度決めたら、あとはお任せ」な人: 毎年、電力会社を見直すのは面倒くさい。信頼できる会社に一度決めたら、あとは放っておきたい。そんなあなたには、「一番安く」なくても「十分満足できる」東京ガスが良い選択肢になります。
ちょっと待って!他の会社も考えた方がいいのは、こんな人
- 「1円でも安く!」を追求する人: とにかく電気代を一番安くしたい!というあなた。東京ガスよりも安い会社は他にあります。Looopでんきやシン・エナジーなど、他の会社の料金も比べてみるべきです。
- 電気をあまり使わない一人暮らしの人: もともと電気の使用量が少ないと、乗り換えても安くなる金額はほんのわずかです。乗り換えの手間を考えると、今のままでも良いかもしれません。
- 電気代が急に上がるのが怖い人: 「上限のない燃料費調整額」のリスクが気になるあなた。毎月の支払額を安定させたいなら、東京ガスは向いていません。東京電力の昔ながらのプランの方が安心です。
- スマホアプリなどをサクサク使いたい人: アプリやサイトが使いにくいとイライラしてしまうあなた。「myTOKYOGAS」の使い勝手は、不満の原因になる可能性が高いでしょう。
「東京ガスはあなたに合う?」かんたんチェック
あなたが一番大事にすることは? | 高い | まあまあ | あまり気にしない |
---|---|---|---|
とにかく一番安い料金 | 他の会社を探そう | △ | ○ |
会社の信頼感・安心感 | ◎ | ○ | △ |
毎月の電気代の安定 | 他の会社を探そう | △ | ○ |
アプリやサイトの使いやすさ | 他の会社を探そう | △ | ○ |
診断結果: 「会社の信頼感」が一番大事で、他のこだわりが少ないなら、東京ガスは良い選択です。でも、「一番安い料金」や「毎月の電気代の安定」を求めるなら、他の会社も見てみることを強くおすすめします。
乗り換えを決めたあなたへ:手続きかんたんガイド
もし「やっぱり東京ガスにしよう!」と決めたら、手続きはとても簡単です。
申し込みの4ステップ
おすすめの申込方法
電話は混み合ってなかなかつながらないので、インターネットの公式サイトから申し込むのが一番早くて確実です。
Step 1: 「検針票」を用意しよう
今の電力会社から毎月届く「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」を手元に準備してください。ここに書いてある「お客様番号」や「供給地点特定番号(22桁の数字)」が必要になります。
Step 2: 公式サイトの申込ページへ
公式サイトには、プランや状況(今の家で切り替えるのか、引っ越し先で新しく使うのか)によって入り口が違うので、自分に合ったページを選んで進みましょう。
Step 3: 情報を入力する
画面の案内に従って、準備した検針票の情報や、あなたの名前、住所などを入力していきます。
Step 4: あとは待つだけ!
申し込みが終われば、今契約している電力会社への解約連絡などは、すべて東京ガスがやってくれます。あなたの家が「スマートメーター」という新しい電気メーターでなければ、無料で交換工事がありますが、基本的には立ち会いも不要です。申し込みから実際に電気が切り替わるまで、だいたい1ヶ月から2ヶ月くらいかかります。
契約前に、これだけは確認して!
- やめたくなっても、解約金はかからない: 東京ガスの電気には「〇年使わないとダメ」といった契約の縛りや、解約金は基本的にありません。もし将来、もっと良い電力会社が見つかったら、いつでも気兼ねなく乗り換えられます。
- セット割の条件をもう一度チェック: ガスと電気の「契約者の名前」「住所」「支払い方法」が、全部ピッタリ同じでないと割引が適用されません。申し込み前によく確認してくださいね。
- 「基本料金1ヶ月無料」は、すぐじゃない: この特典が適用されるのは、最初の請求ではなく、2回目か3回目の請求の時です。最初の請求書を見て「無料になってない!」と慌てないでくださいね。
最後のまとめ
東京ガスの電気は、東京電力からの乗り換えを考える人にとって、「悪くない選択肢。でも、最高ではないかもしれない」というのが私の結論です。
たしかに、多くのご家庭で電気代は今より安くなりますし、「東京ガス」という名前がくれる安心感は絶大です。請求書が一つにまとまる便利さも、忙しい毎日の中では嬉しいポイントでしょう。
しかし、その安心と便利さを手に入れるために、あなたは「一番安く電気を使うチャンス」と「燃料費が上がった時の家計の安定」を天秤にかけることになります。さらに、問い合わせ窓口のつながりにくさや、アプリの使いにくさといった、日々のちょっとした不便さも受け入れなくてはなりません。
最終的に決めるのは、あなた自身です。
もしあなたが、「よく知っている安心できる会社で、そこそこ安くなれば十分。細かいことは気にしない」というタイプなら、東京ガスはきっと満足できる選択になるでしょう。
でも、もしあなたが「とにかく安さを追求したい」「毎月の支払額が急に変わるのは困る」「サービスは快適な方がいい」と思うなら、世の中にはもっとあなたにピッタリな電力会社があるはずです。
この情報が、あなたのベストな選択の助けになれば、これほど嬉しいことはありません。
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